第20話「普段の生活について」

 

その頃になると、自分にも少し余裕ができてきて、普段のヨルングの人々はどんな生活をしているのかと、辺りを色々歩き回ってみた。年輩の方々は、基本的にビーチ沿いの木陰でのんびり話し合いをするのが好きなように思えた。何に付いて話しているのかと思いしばらく見つめていると、一人の強面年輩の男が、どこからか石を拾って持ってきたのだった。するとその石を取り囲むように数人の男が座り込み、真剣な眼差しでその石に付いて何やら話し込んでいる。15分を経過した頃だ、一人の大男が石を指差し笑い出したのだ。すると一人、又一人と強面な男達が、バシバシ手を叩きながら、その石を囲んで大爆笑しはじめたのだった。この光景を見ていた僕は、なんかすごくほっとした気分にさせられた。見た目はみんないかついけど、みんな一緒だなーなんて考えたりした。生活の周りにあるもの何でも楽しめてしまうというか、楽しみにかえてしまう柔軟なハートを持っているんだなと感心。なぜか涙が流れ出た。

子供達はというと、1日に2回程回ってくるナッタバス(ナッタとは食物の事。いろんな食べ物をのせたバスでお菓子類もたくさん積んでやって来る。)が大好きなようだった。中年代の人達は、狩りに行ったりしていた。木のボートの上から、モリをヒュッと投げ魚を捕らえるのが上手だった。すごい的中率。少し投げさせてもらったのだが、僕には全く魚を捕らえる事ができなかった。ゴアナ(腹が黄色、背中が緑、眼が赤)という大トカゲもよく捕まえてきていた。これをみんな、焼いたり蒸したりし、マニマックと言いながら食べているのだが、僕はおいしいとは一度も思った事はなかった。どことなく生臭く、獣を食べているという先入観から抜け出せなかった。

おいしいと言えば、イダキのカットに行った時に食べる、ハチやアリの幼虫の持つ蜜だ。これらは、アリが食い荒らしスカスカになっているユーカリの中心部分に、たまにいるのである。それをスカスカになった木屑ごと一緒に食べるのだ。これは僕の大好物となった。そしてその食いカスをシュガーバックといい、イダキのマウスピースに使っていた。本当に生活全般において無駄がないのだ。リサイクルが本当に生活に深く浸透している感を持った。日本での生活とは程遠い物ではあったが、学ぶべき事は本当に一杯あった。

 

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