第18話「ギフト」

 

ある日、ジャールが一本の年期の入ったイダキを持って来て、これを吹いてみろという感じで手渡された。おそるおそる口を付けてみる。最高の感触だった。この時初めてイダキについて色々話してくれた。基本的な音の出し方や歌、踊りとの絡み方など。一つすごく驚いた事があった。基本の音の出し方が、今まで僕がやってきた音の出し方とは全く違った事だ。そして話が一段落すると、ジャールはそのイダキを突然削り出したのだった。セレモニーで使っていた物らしく、すごく年期が入っているペイントもあるのにもったいないなぁなんて思いながら眺めていた。外面のシェープが終わると、次はペイントを始めたのだった。見事な手捌きで、どんどんペイントが進んで行く。途中、彼の孫にあたるアランがやってきて、和気あいあいとした雰囲気の中、イダキが装飾されていった。ペイントが終わりに差しかかってきたかなと思い出した頃、アランが僕を急に指差し、次にイダキを指差した。何のこっちゃ意味が分からず、僕もアランに指を差し返したりして笑った。日が陰り出した頃、ペイントが終わった。見事だ。ジャールはしばらくそのイダキを見つめた後、イダキを僕の目の前に差し出した。「ギブ ユー」この時やっと、さっきのアランの指差しが、何を意味していたのかが分かった。本当に嬉しかった。日本語で「まじっすか」って言ってしまったぐらい嬉しかった。

 

(C)2008 JUNGLE MUSIC