第1話「なぜディジュリドゥなのか?」

 

なぜディジュリドゥなのか?と人によく聞かれる。その問いかけは何度も何度も自分にしているのだが、いま だかつて答えらしい答えは見つからない。しかしここ最近、自分はやはり出会うべきしてディジュリドゥに出会った気がしている。そしてその出会いを言葉に置き換えると「好き」という言葉が一番はまっているの だ。とにかく「好き」なのである。ディジュリドゥに出会う以前にも好きなものは多々あった。あれも好き、これも好き、あれもやりたい、これもやりたいという具合で、器用貧乏の典型的人間だった。しかしこれがどうしたものか、ディジュリドゥに出会ってからというもの、これがピタリと無くなったのだ。 とにかく昔から良いのか悪いのか、興味が惹かれるとすぐに実行に移していた。「考える前にまず動く。」幼い頃ドジョウを捕まえに行った時、祖父に言われたこの言葉がずっと脳裏に焼き付いていた。中学に入学して間もない頃に、ある先生に「行動を起こす前によく考えてからしなさい。」と注意され、そう自分に言い聞かせてしばらく過ごした事が会ったが、すると物事がなかなか思うように進まず、それ以来、物事に対して必要以上に考えるという事をしなくなってしまった。しかし、これが又ディジュリドゥに出会ってから「よく考える」のである。とにかく何をしている時も、朝起きてから夜眠るまでの間、頭のどこかにディジュリドゥがいる。意識的にディジュリドゥを遠避けようと映画を見たり、本を読んでみたり、音楽を聞いてみたりしてみるのだが、気がつくと又ディジュリドゥで頭が一杯になっているのだ。とにかく、ディジュリドゥに出会ってからは、生活すべての中心がディジュリドゥになってしまったのだ。
そもそもディジュリドゥとの出会いはというと、友人から誘われたダンスのワークショップでだった。会場に近づくと土着的な太鼓の音色に混じってあやしい香りが漂ってきたのだった。その頃の僕はというと、「ともだち」という名のヒップホップダンスチームを組み、夜な夜なクラブへ行き踊り明かすという日々で、その当時の僕にとっては、そのビートも香りも、馴染みのない物ばかりで正直不安だった。(今から思うとそれはジャンべ(アフリカの太鼓)とインセンだ)。しかし、ここまで来て帰るとは友人に言い出せず、何事も経験だと思い足を踏み込んだのだった。
ブゥオーーーーン、ブゥオーーーーンその不安は一気に吹き飛ばされ、目を見開いた体に衝撃が走った。この音、俺知ってる。その振動はどこか懐かしく、僕に何かを語りかけているようだった。
「やっと会えたな。久しぶり。もうこれで大丈夫だぜ。」
そのサウンドの知る遠い記憶が、はるか時空をこえて僕の中に蘇ってくるようだった。これが僕とディジュリドゥとの出会いの瞬間だった。

 

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