第3話「呼吸」

 

ディジュリドゥを演奏する際に、一つ必ずクリアしなければならないキーポイントがある。
それはサーキュラーブリージングと言われている一種独特な循環呼吸法である。
ディジュリドゥのサウンドを生で聞いた事のある人は既に御存じであると思うのだが、音が途切れずに永遠と続くのである。長い人では8時間とか聞いた事がある。その呼吸法の理論を説明するとこうである。口かずっと息を吹き出しながら同時に、鼻からも息を吸い込むのである。こう説明すると、そんな人間離れした事不可能だと言う人もいるのだが、これができてしまうのである。人によって修得にかかる時間はまちまちだが、普通に肺と鼻と口があれば可能な事なのだ。僕の場合、この呼吸法を修得するのに30分はかからなかった。この事も僕をディジュリ道へ深く導く事になった要因の一つだ。そしてこの呼吸法を修得した者が、口を揃えて言う事がある。「普段の自分とは違う、もう一人の自分に出会った気がする。」と。その感覚は、イタコの様に何者かが何処かから舞い降りてくるという様な感じではなく、もともと自分の中にいる何かが、その呼吸法によって解き放たれるような感じである。

この呼吸法を習得して以来、僕はいつも何気なくしてきた呼吸というものを、すごく意識するようになってしまった。最近では、呼吸がすべての原点であるような気がしてきている。真のディジュリドゥという者(物)は、どうやら僕の中にそしてみんなの中に存在しているようである。そしてその存在は、この呼吸法によって深い眠りの封印から解き放たれるのである。僕はその存在にこう名付けた。GOMA。こうして僕とGOMAの二人三脚の新しい生活が始まったのだった

 

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