第17話「サンドフライ」

 

一週間程たったある朝、あまりのかゆみで目がさめた。眠気眼でふと、自分の腕に目を向けた。するとそこには自分の腕とは思いがたい、まるで月の表面クレーターのようになった我が腕が発見されたのだった。さらに視点を恐る恐る足の方へと移す。そこで目に飛び込んできたのは、この世のモノとは思いがたい月の表面にてミカンが風化してしまったかのような我が足だった。次に顔を触って確かめてみる。間違いなく、クレーターだった。頭の先から足の指の間まで見事だった。夢の世界かと思いもう一度寝てみようとしたが、かゆみが現実に引き戻す。どうやら現実のようだ。これは日焼けが原因なのか?と、となりで寝転んでいるヨルング達の肌を見てみる。何の異常もない。どうやら僕だけがこんな事になってしまっているらしい。此の症状をヨルング数人に見てもらった。その内の一人が、以前此の場所に来たバランダが同じような事になったのを知っているという人が現れた。おそらく熱帯特有の蠅蚊サンドフライの仕業だろうということだ。僕はすぐに病院に連れて行かれ処置を受けた。推測どうりサンドフライにやられているという結果だった。

「なぜ僕だけなんですか、一緒に寝転んでいたヨルング達はどうもなかったのに」と尋ねると、「肌の分厚さが違うんだよ。」というような答えが返ってきた。そこで塗り薬をもらい、みんなどんな分厚い肌してんねやろと思いながら、ひたすらかゆみと戦った。症状が治まるまで2週間程かかった。あのかゆさは、今でも思い返すとぞっとする。そんな中、徐々にヨルングの人達とも打ち解け、受け入れられてきたのがわかってくる。一週間を過ぎた当たりから、急にみんなが話し掛けてくれだしたのだ。すごく嬉しかった。試されていたんだなって思った。激しいかゆみの中、もしディジュリドゥがなかったら、とっくに此の場を去っていただろうなって何度も考えた。

 

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